カレンダーのJanuary・February…と続く英語、スペル覚えるのに一苦労しませんでしたか。
ほんとに英語?と思うくらい、覚えにくいスペルや発音が並んでいます。
思い立って調べてみたところ、意外な人物に出会うこととなりました。
July(7月)の由来
Julyの由来は、あの「Gaius・Julius・Caesar(ガイウス・ユリウス・カエサル)」、そう、ローマ共和制時代・三頭政治をおこなった1人、カエサルです。
有名な人物はカレンダーの名にも刻まれるんですね。
ちなみにカエサルは暦制定もしています。
そう、ユリウス暦です。
ユリウス暦については後半の方に書かせていただきますので、とりあえず先に進みます。
なぜ7月はカエサルの名が由来になったのでしょうか?
答えは簡単、生まれ月だったからです。
この続きで8月【August】も見ちゃいましょう。
August(8月)の由来
8月【August】の由来は、初代ローマ皇帝「Gaius・Octavianus(ガイウス・オクタヴィアヌス)」だそうです。
オクタヴィアヌスは、養父カエサルが暗殺されたその後のゴタゴタをおさえ、ローマ全土の支配者となり、元老院からアウグストゥス(尊厳ある者という意)の称号を授けられています。
Augustus(アウグストゥス)、こうみると、August!納得!
では、なぜ8月がAugustになったのか?
こちらもオクタヴィアヌスの生まれ月だからでした。
元々8月はSextilis(第6の月)と表記されていましたが、それを変えたようです。
ここで「ん?第6の月??」と違和感を抱きますね。
8月がなんで第6の月??
この話に進む前に、当時の暦の考え方についてふれておきましょう。
古代ローマで使われていた暦
紀元前710年まで使われていたのがロムルス・レムス暦、以降がヌマ暦といわれるものです。
ロムルス・レムス暦では、1年はMarutius(現3月)からDecember(現12月)までの10か月=304日なんだそうです。
1年は365日ですよね。
61日はどこにいってしまったのか?
実はこの61日の部分を、「死の季節」として設定していたようです。
ところが、ヌマ暦になってこの「死の季節」の部分を二分割したようです。
そうして誕生したのが、「Januarius」と「Februarius」です。
その後、カエサルが古代エジプト暦を参考に完全な太陽暦を全ローマに発布。
これがユリウス暦です。
’’完全な太陽暦’’ってなんのことかさっぱりわかりませんが…!
とにかくこのユリウス暦で1年は365日、4年に1度閏年を置くことが決められました。
そしてこれが13世紀まで続きます。
グレゴリオ暦に修正
16世紀、ローマ教皇グレゴリウス13世が暦を修正します。
これが今に続くグレゴリオ暦です。
なにを修正したのか?
実は、ユリウス暦では若干の誤差が生じます。
実は、正確には1年は365日ではなく、「365日と6時間弱」と長いため、4年経過すると合計でほぼまる1日長くなってしまいます。
これが閏年として調整されていたがのがユリウス暦ですが、問題は「6時間弱」という「弱」の部分です。
この「弱」部分がちりも積もればで、16世紀になる頃には10日ほどのズレが生じていました。
よって、1582年10月4日の翌日を10月15日とし、過去のズレを修正したのです。
この年は10月5日~14日が存在しないという珍しい年になっちゃいましたね。
この修正をすることで、3000年に1日ほどのずれになったのです。
そもそもの西暦の考え方はイエスが誕生した年を基準としており、これがヨーロッパの一般の人々にまで浸透したのは15世紀頃だと言われています。
一応日本についてもお伝えしておきます。
日本は和暦を使ってきました。
古代ローマ暦と同じ、1年を太陽の動き、1か月を月の動きで構成する、太陰太陽暦です。
日本が西暦(ユリウス暦)を導入したのは1872年。グレゴリオ暦に移行したのは1900年です。
わりと最近なんだということに驚きました。
その他のカレンダー月の名の由来(9月~12月)
本題の月の名前に戻りましょう。
先ほどお伝えした通り、ロムルス・レムス暦はもともと3月がスタート基準なんですよね。
1月2月は死の月扱いでした。
だから、スタート月である3月から数えて第6の月、それが現8月にあたるのです。
覚えてますか?Augustになる前の元々の月名はSextilis(第6の月)です。
ここに繋がっていくわけですね。
ここから先、第7の月=現9月(September)→ラテン語のSeptemは「7」の意味
第8の月=現10月(October)→ラテン語のOctは「8」の意味
たこの名前オクトパスも、8本足が由来で「Oct」という名がついています。
続いて第9の月=現11月(November)→ラテン語のNovemは「9」の意味
最後、第10の月=現12月(December)→ラテン語のDecemは「10」の意味。
英語の10年を意味する「decade」もこのラテン語「Dec」の部分からきてます。
つまり、8月のアウグストゥス以降、それぞれの月に特別な人物名がつくことはなかったんですね。
急速に暦の読み方が広がって、変えるのが大変になったのか、興味がなくなったのかそのあたりはよくわかりませんが。
意外とシンプルじゃん、と思いきや、現1~6月は様子がガラリと変わります。
その他のカレンダー月の名の由来(1月~6月)
1月Januaryは、ヤヌス神(Janus:ラテン語)からきています。
2月Februaryは、ローマの贖罪の神フェブルウス(ギリシャ神話だとプルートと同一視されている?)が由来といわれています。
古代ローマでは、戦争で亡くなった戦士の霊を弔うために、毎年2月に慰霊の浄化のお祭りである「Febura」を行っていたそうです。
プルートは冥界を司る神ですし、確かに通ずるものはありそう。
ただ、他にもいくつか説はあるようです。
3月Marchは、農業と戦争の神Mars(マルス:ギリシャ神話ではアレス)が由来といわれています。
火星のMarsもこの軍神Marsが由来のようです。
4月Aprilは大地における1年の始まり。
ギリシャ神話の、愛と豊穣の女神Aphrodite(アフロディテ)に由来しているそう。
アフロディテは英語名だとVenus(ヴィーナス)です。
5月Mayは繁殖・成長を司るMaia(マイア女神)に豊穣祈願の生贄を捧げる月という説があります。
6月Juneはユピテルの妻Juno(ローマ神話ユノ:ギリシャ神話ではヘラ)に由来するそうです。
結婚生活を守護する最高位の女神。
ジューンブライドはここからきています。
1月~6月をみてみると、ギリシャ神話の神々がたくさん出てきましたね。
聞いたことある名前もちらほら。
ちなみに、ギリシャ神話とローマ神話の神々は(名前は違えど)ほぼイコールと捉えてよさそうです。
ローマと聞くとキリスト教(一神教)のイメージがありますが、ローマでキリスト教が公認されるのは313年、国教化は392年ですから、カエサルの時代にはまだキリスト教は存在してませんね。
こういうのを少しでも知ってると、カレンダーをめくるときにちょっと楽しくなりますね。
カエサルの名前
最後に、カエサルについてもう少し書かせていただきます。
カエサルって、名前がとにかくややこしくないですか。
名前のバージョンが多いので、途中で迷子になることがしばしばあります。
よく聞く皇帝「シーザー」もカエサルのことです。
実はこれ、何語でカエサルを呼ぶかで変わってくるのです。
英語・ドイツ語・フランス語・ラテン語・ロシア語…etc
山川出版社「詳説世界史図録(第3版)」を持っているのですが、最終ページに「人名対照表」があります。
シーザーは英語。
カエサルはラテン語。
ドイツ語はカイザー、ロシア語はツァーリ。
ツァーリは皇帝を意味する語源にもなっています。
そうです、同じ名前でもいろんな言語で訳されていて、わたしたちはそれを耳にしているんですよね。
例えば、
英語のキャサリン:フランス語ではカトリーヌ、ロシア語ではエカチェリーナ…
ドイツ語のカール:英語ではチャールズ、フランス語ではシャルル、ラテン語ではカルロス…
高校の頃はこんなこと、あまり気づかずに過ごしてきました。
なるほど、おもしろいし意外な人物が同一人物だったんだなと大人になって気付いたこともあります。
カタカナ=英語、と思いこんではいけませんね。
カエサルは「ガリア戦記」を書いたことでも有名です。
ガリア征服(現フランス地方)をした際の話と思われますが、執筆の才能もあったとは恐れ入りました。
暦の制定もし、本も書き、政治に関わり、戦争にも向かう。
彼がいまも人気を博している理由が、ちょっとわかった気がします。