イギリス史★★★
カクテルの名前に、「ブラッディメアリー」というのがあります。
このお酒が、歴史上の人物メアリ1世からきているとご存じでしたか?
しかも訳すと「血みどろメアリ」なんて物騒な言葉になります…。
メアリ1世はどんなことをした人物なのか、みていきましょう。
メアリ1世が登場する時代背景
時代は1500年代。
メアリ1世の舞台はイギリスです。
メアリ1世の前に、彼女の父ヘンリ8世の話を少ししましょう。
ヘンリ8世もなかなかの人物で話題豊富なんですが、とりあえずここはあっさりひとことで伝えると、
「離婚できないならもうカトリックやめる!」です。
カトリック世界では、離婚は認められていません。
そのため、カトリックのトップ・ローマ教皇はヘンリ8世の「離婚」意向はもちろん却下していますし、なんなら破門してます。
しかしここで負けないヘンリ8世、じゃあカトリック信仰を辞めてイギリス国教会を立ち上げます、となっちゃったわけです。
この経緯についてはこちらを参考にしてください↓
イギリス国教会の誕生
ヘンリ8世は1534年に国王至上法(首長法)を発布し、国王がイギリス国内の教会の首長であることと宣言し、ここにイギリス国教会の成立をさせてしまうのです。
イングランドの教会の首長はローマ教皇ではなく、イングランド国王ですからね、ということです。
つまり、カトリック世界からの離脱宣言です。
なかなかケンカ売ってます。
こんなの、この時代に簡単にはできません。
しかも、この頃のイングランドは今のイギリスとは全然違う、ヨーロッパ辺境の弱小国です。
すんなり許されたわけではないでしょうが、大きな争いが起きなかったのは、この時代のローマ教皇の権威・権力がだんだん小さくなってきた、と考えられます。
そしてまだ先にはなりますが、「国」としての意識や制度が形成されていく流れの1つに、このイギリス国教会の成立があるとも考えられます。
そもそもイギリス国教会ってなんだ?ですが、カトリックから特段大きく考えや内容が変わるわけではなかったようです。
一般祈祷書や礼拝方法が定められ、細かいところは変わってますが、教義自体はローマ・カトリックの教義から大きく離れることはありませんでした。
メアリ1世、現る
イギリス国教会が成立したとはいえ、そんなすぐにみんなまわれ右とはなりません。
ヘンリ8世を継承したエドワード6世は新教(国教会)を採用したわけですが、そのあと「待った!」をかけたのがメアリ1世です。
そもそも、エドワード6世が早世してしまったため、後継にまわってきたのはヘンリ7世のひ孫であるジェーン・グレイでした。
ところがメアリ1世の手で即位9日で廃位され、その後処刑されてしまいます。
メアリ1世、怖すぎる…!
彼女はカトリック教徒であり、後にスペイン国王フェリペ2世と結婚します。
スペインといえば、バリバリのカトリック教国です。
しかも当時のスペインは大国です。
オーストリアとスペイン、両方ともにハプスブルク家が支配しています。
彼女はこの強力な後ろ盾を得た状態で、イングランドで権力をふるいまくり、プロテスタントを迫害しまくったのです。
国教会なんて冗談じゃない、カトリックを復活させ、新教徒(プロテスタント)を迫害するのです。
国教会が成立したとはいえ、まだまだカトリックとプロテスタントの対立は続いた状態ですからね。
そして国教会はプロテスタントではありますが、独自のプロテスタントなので、カルヴァン派プロテスタントとはまた違うのです。
そのため、プロテスタントも一枚岩ではありません。
ややこしいですが、国教会はプロテスタントではあるものの、先ほど伝えた通り独自の教義があるわけではないのです。
メアリ1世はプロテスタント数百人(300人前後と言われてる)を処刑しています。
これが、ブラッディメアリーの由来に繋がっていくのです。
たしかに、「血みどろメアリ」と言われる所以はありそうね。
エリザベス1世の時代へ
メアリ1世死後、エリザベス1世の時代になって、国教会の成立を確かなものにしていきます。
しかしエリザベス1世の死後、処女王と言われたエリザベスに直系の子はいません。
次のイングランド国王になったのはスコットランド王家です。
スコットランドはカトリック国でありながら清教徒(ピューリタン)が強く、イングランドの国教会とはまた違うため、このあと事態は複雑になっていくのです…。
※イギリスでは、カルヴァン派のプロテスタントをピューリタンと呼びます。
ここから時代が流れていきピューリタン革命や、新大陸アメリカへのピューリタン移住に繋がっていくわけです。
ブラッディメアリーというカクテル
ブラッディメアリーについて紹介しましょう。
このカクテルは、ウォッカをベースにトマトジュースを入れて作るそうです。
トマトジュース!!
見た目、ブラッディですね~!
そこにスパイス(塩とかレモン、タバスコ等)も加えるようです。
カクテルにはカクテル言葉があるそうで、
ブラッディメアリーは「私の心は燃えている」「断固として勝つ」だそうです…!
女性を口説くときに使うのはいいかもしれないけど、この名前の由来を知ったらそんなロマンチックには語れないですね~。
ちなみに、このカクテルを考案したのは高級ホテル「セントレジス・ニューヨーク」にある「King Cole Bar」のバーテンダーと言われています。
いまでもこのホテルの「ブラッディメアリー」は有名のようですよ。(HPにも載ってます!)