教科書ではじめの方に「ヘブライ人」について書かれています。
遊牧民であったヘブライ人は、前1500年頃パレスチナに定住し、その一部はエジプトに移住した。
「詳細世界史B(改訂版)」山川出版社
そしてそのあとはすぐモーセの話が続き、そしてまたその後に急にユダヤ人やらユダヤ教やらの話が出てきます。
これだけ読んでるとヘブライ人→ユダヤ人になった?ような錯覚に陥ります。
呼び方が何かをきっかけに変わっていったのかな?
言い方については、誰目線かで変わってくるからね
エジプトに移動した際、エジプト側からヘブライ人と呼ばれていたようです。
つまり、ヘブライ人は外側から呼ばれた名前ですね。
日本でいう、ジャパニーズ的な感じと捉えたらわかりやすいかと。
ただ、これはエジプトでの奴隷時代の呼称というイメージを彷彿とさせるので、今では使われていないようです。
出エジプト後、カナンの地で王国を作るあたりは、自分たちをイスラエル人と呼んでいたようです。
その後、バビロン捕囚あたりから今の我々に馴染みのあるユダヤ人という呼び方に変わっていきました。
ユダ王国から通ずるようで、ユダヤ教成立と同時期に浸透していったと考えられます。
ちなみに、元々のユダヤ人はセム語系の民族です。
ユダヤ人はどこから始まる?
一般的には、民族の始祖アブラハムという人が、メソポタミア南部の「ウル」という場所から部族を引き連れてイスラエル、パレスチナ付近(=カナンの地とされる)に移住した、というところから始まります。
その後、一説には大きな飢饉が起きたことが原因ともいわれますが、彼らはエジプトに向かいます。
しかし、エジプトでは奴隷として扱われてしまったようです。
これは個人の想像ですが、エジプトに大きな都市があると噂で聞いたら、食料がなく生きるためにその地へ向かうのは当たり前のことなのかなと思います。
でもまさか移動した先で奴隷として苦役を強いられるとは思わないですよね。
そのエジプトから、「我々が元々いたカナンの地へ戻ろう!」と行動したのが有名なモーセ「出エジプト」の話です。
当初のエジプトへの移動~出エジプトまでの期間、なんと約400年…!
もう耐えられない、先祖たちは自分たちの土地(場所)で住んでたらしいじゃないか、そこへ戻ろう!そんな感じだったのかな。
とにかくこの出エジプト、60万人もの大移動だったと聞き驚きました。(ほんとかな!?)
束の間の平穏
無事にカナンの地へ戻った彼らはその後、王国をつくります。
B.C10世紀前後、ヘブライ王国を建国します。
束の間の平穏であり、その後のユダヤ人にとっても”自分たちの国”といえる唯一の時期です。
有名な「ダヴィデ王」(ミケランジェロのダヴィデ像のモデル・トランプのスペードのキング)とその子「ソロモン王」のもとで栄えますが、ソロモン王が亡くなった後にまさかの王国分裂です。
北は「イスラエル王国」南は「ユダ王国」です。
そして間もなく、両方とも他国に支配されてしまうのです。
いつ、聖典(旧約聖書)ができた?
北のイスラエル王国はB.C.722年にアッシリアに支配されます。
南のユダ王国はB.C.609年にエジプトに支配されます。
このエジプト支配ですが、その後エジプトと新バビロニアの戦い(カルケミシュの戦)の中で新バビロニアが勝利し支配元が変わります。(B.C.605年)
そして行われたのが歴史上有名な「バビロン捕囚」です。(B.C.586年)
50年もバビロンで囚われ続けたと言われています。
結局その後、新バビロニアは滅亡しアケメネス朝ペルシアがオリエント統一、ユダヤ人たちを解放したことから元の地に戻ることができました。
でも今度はローマ帝国に支配されていきます。
紀元前1世紀には祖国を完全に失って、ユダヤ人は亡国の民になってしまいます。
実は、ユダヤ教の聖典ができたのはこのバビロン捕囚あたりではないかと考えられています。
「なんで我々はこんなひどい目にばかりあわなければならないのか」この思いが根底にあったのではないでしょうか。
預言者モーセを介して神から授かった十戒、これをひたすら守り続けていけば神はユダヤ人だけを救ってくれる、そのような選民思想宗教になりました。
ちなみに、現在では「旧約聖書」というと自然とユダヤ教を思い浮かべますが、これはキリスト教徒からみた言い方です。
キリスト以降を「新約聖書」、それより前を「旧約聖書」と呼びます。
ユダヤ教を元にしてますが、わかりやすく言うとユダヤ教の宗教改革版がキリスト教です。
こちらはまた別の機会に。
とりあえず、ユダヤ教徒にとっては新も旧もありません。
単に「聖書」といったり「タナハ」と呼ぶんだりするよ
それにしても、まさかユダヤ教を元にその後キリスト教、イスラム教に枝分かれするとは思わなかったでしょうね。
ユダヤ人は現イスラエルまで”国”というものを持ちませんが、世界史の中でずっと目にする稀有な民族だと思います。
第一次世界大戦中、ユダヤ国家建設を約束されたときどんな気持ちだったろう、その後の世界の動きをどんな思いで見て、生きてきたのだろう、そしていま建国から半世紀以上経ちどう感じているのか。
ユダヤ人の歴史を知ることでみえてくる世界もあると思います。
わたしは個人的に、ロスチャイルド家の話を読んで近世~現代のユダヤ人についていろいろと学べました。
世界史を知るうえでまず宗教史を知るのは大事よね。
そうだね。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の基本は最低限知っておくと、歴史認識はもっとおもしろくなるよ!
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